エイミー・ワインハウスが27歳の太く短い人生を駆けぬけっていった。
独特の容貌、刺青が刻み込まれた華奢な身体に不似合いなソウルフルなボーカル。キャラの濃さ以上に際立つボーカリストとしての実力に、彼女がブレイクして世に出てすぐには久々の「本物」登場と思ったものだ。
しかし、その後の彼女はその類希な才能を充分に発揮しきれないまま、ドラッグ絡みのニュースでのみ世間を騒がせた。
そして届いた凶報、先月のベオグラードでのライブでの醜態を伝えた報道の直後ではそんなに驚かなかったのが正直なところだ。その訃報を伝えるメディアの論調からも「彼女ならこんなことも予期できた」というような予定調和のニュアンスが読み取れたくらいだ。
27歳、この年齢は有名アーティストにとっては一種の鬼門。俗に「the 27 club」と呼ばれ、過去も才能のある多くの音楽界のスーパースター達がこの年齢で世を去っている。ジャニス・ジョプリンしかり、ジミ・ヘンドリックス、ジム・モリソン、ニルヴァーナのカート・コバーン・・・・。2008年グラミー5冠で一世を風靡したエイミー・ワインハウスも、これから後は伝説のスターと同列に扱われることになる。
ドラッグに溺れ、アルコールに身を預け続けたエイミーは、結果的にその人生の最後のステージとなってしまった栄光からの転落の日々で一体何を思い続けたのだろうか。本当に再起を図るつもりがあったのか。受動的ニヒリズムの悪循環に陥り、身を滅ぼさざるを得なかったのか。
生前の彼女は、果たして前述の「the 27 Club」を多少なりとも意識したことがあるのだろうか。もし、ドラッグで身を滅ぼしつつある自らのアーティストとしての名声を伝説として残せるのでは・・などと少しでも考えていたのであれば、ドラッグやアルコールは彼女の正常な思考回路も蝕んでいたと言わざるを得ない。
そう考えたとき、自分も含め世間がこの「The 27 Club」なる“偶然”について触れ続けることはあまり得策ではないと思うに至った。「自分も偉大なるアーティストと同列に扱われたい」などという不純な動機で死に走る(そもそも死に走ること自体が不純だが)人が今後も現れないとも限らない。
一度堕ちた歌姫は、復活ならずに逝った。
エイミー・ワインハウスの27歳での夭折、好むも好まざるも彼女はこれで伝説となる。その自暴自棄的な生き様にシンパシーは感じるのはなかなか難しいが、その才能の損失は本当に惜しまれてならない。
今はとにかく安らかに眠ってもらいたい。 合掌
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